仙台高等裁判所 昭和29年(う)676号 判決
しかし、本件行為時である昭和二十八年十二月当時施行されていた食糧管理法関係法規によれば、当時米穀に関するもので主要食糧とされていたものは、米穀(食糧管理法第二条)、米穀粉、米穀粉を主たる原料として製造しためん類、もち、米飯(かゆその他これに類するものを含む)、及び米穀又は米穀粉を主たる原料として製造した加工品であつて農林大臣の指定するもの(同法第二条、同法施行令第一条)であり、右分類中最後の農林大臣の指定するものは、白玉粉、アルフア化米粉及びみじん粉(同法の施行に関する件四項)である。以上各法規が米穀及び米穀粉とこれらを主たる原料として製造した加工品とを明確に類別している規定の形式からするも、又需給関係の調整その他管理の必要度において両者必ずしも同一ではないと思料される点に鑑みるも、食糧管理法関係法規にいわゆる米穀又は米穀粉は一般にその加工品―農林大臣の指定するものであると否とにかかわらず―を含まない趣旨であると解するを相当とする。従つて「米穀、米穀粉又はもちは、左に掲げる場合を除いて、何人もこれを輸送し……てはならない」との同法施行規則第四十七条第一項の規定は、米穀又は米穀粉を主たる原料として製造した加工品をすべて輸送制限の対象から除外した趣意と解すべきであり、米穀粉を主たる原料とする加工品中農林大臣の指定するもの以外のものはすべて輸送が制限される米穀粉に包含されるものと解する所論引用の判例の見解には賛同することができない。飜つて本件につきこれを観るに、証人佐々木鼎、同横山遠、同齊藤将治、同上野今朝松及び被告人の原審公廷における各供述、樋渡運四郎の検察官に対する第一回供述調書、司法警察員作成の捜索差押調書(乙)、司法警察員作成の昭和二十八年十二月九日付換価処分顛末書及び仙台食糧販売協同組合作成の同日付押収主要食糧領収書の各記載によれば、本件において被告人が輸送したのは俗に上南と称する菓子種の一種であり、右上南は糯米を二十時間前後水に浸した上蒸籠で蒸し、これを乾燥して製粉機にかけて製粉し、これに適度の湿度を加え(或は更に食油又は食油と炭酸マグネシウムを混入した上)、煎盤で煎り、最後にこれに適当の湿気を与えて製造されるものであつて、その製品中粒の細いものが俗にいりみじんとも呼ばれていることを認めうるのである。以上の製造工程より観察するときは、いわゆる上南は、輸送制限の枠より外されている同法施行令第一条にいうところの米穀又は米穀粉を主たる原料として製造した加工品に該るものと解するのを相当とする。さればこれと同一見解の下に被告人の本件輸送の所為は罪とならないものとして無罪の言渡をした原判決は正当であつて、法令の解釈適用を誤つた違法は存しない。所論は独自の見解に基く主張であつて採用し難い。論旨は理由がない。
(裁判長裁判官 松村美佐男 裁判官 細野幸雄 裁判官 有路不二男)